注目の記事 PICK UP!

母子手帳(2)

「リプロダクティブヘルスで大事なことは」

久留米大学文学部教授
宮原信孝

 

1998年~2000年の私が在ベトナム日本大使館に勤務していた頃、日本国際協力事業団(現国際協力機構:JICA)の目玉事業の1つが、ゲアン省におけるリプロダクティブヘルス事業でした。私は、日本の対ベトナム支援の現地総括の仕事をしていたので、この目玉事業も現地視察しました。

私は、現地で働くJICA専門家の説明を聞いて、リプロダクティブヘルスは、子どもを出産する女性の一生に焦点を当て、単に安全な出産だけでなく、健康な赤ちゃんを生み育て、その女の子が成長し、また健康な子どもたちを生むことができるようにすることだと理解しました。そこで「ベンチェ省で母子手帳を使って安全な出産・子育てを推進している日本のNGOがいるので、協力したらより良い活動が出来ますね。」と述べました。ところが、この専門家は言下に「リプロダクティブヘルスは、母子手帳のように短い期間を対象とするのではなく女性の一生全体を見るものですから、協力すればいいというものではありません。」と否定されました。

私も初心者ですから、出すぎたまねはしないようにとは思ったのですが、どうも納得がいかず、首都ハノイのJICA事務所長にお願いして、事務所担当者とベトナムの子どもたちを支援する会事務局長の板東さんが会えるようにしてもらいました。

結果はというと、JICA担当者と板東さんは仲良くなりましたが、JICAとNGOの協力にまでは発展しませんでした。

しかし、10年後、ベトナム政府は、ベンチェ省で始まった母子手帳の全国普及を決定しました。そしてベトナム政府への助言者であるJICA専門家としてハノイに赴任したのは板東あけみさんでした。一方ゲアン省のリプロダクティブヘルスは2期10年の計画を終了してしまいました。

この違いはどこから来たのでしょう。私は、総合的な対応は大事だけれど、今そこで危機にある人々を救う、という視点がNGOにはあり、JICAにはなかったからだと思います。現地のJICAの専門家が悪いのではなりません。プロジェクトにおける視点の問題です。妊産婦と幼児の死亡率が他の途上国と比べても悪い。それをどうするのか。という視点が優先順位の最上位にあったかどうかです。

日本では、死亡率の問題は解消しましたが、出産後のお母さんの心身への負担の問題があります。これにどう対応するのかが、本当の課題です。そこに改革改善が必要とされます。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事

  1. 母子手帳(5)

  2. 母子手帳(3)

  3. 「小学2年生がなりたい偉人たち」(私の好きな子どもたちのいる風景)

  4. 母子手帳(4)

  5. 「低体重で生れた赤ちゃんとお母さん」

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。










公式Facebook

最近の記事

  1. 地に足についてますか? ハピママ2018年10月より
  2. たかが癖、されど癖 ハピママ2018年9月掲載
  3. 美味しい季節ですが…2018年8月ハピママより
  4. ADHD児童の行動や学習を変化させる脳機能を高める新しいアプローチ-8月号
  5. 歯医者ってどんなところ?ハピママ2018年7月掲載
PAGE TOP