注目の記事 PICK UP!

母子手帳(4)

「生活・風習・文化・環境等に合わせた母子保健」

久留米大学文学部教授
宮原信孝

 

板東あけみさん(ベトナムの子どもたちを支援する会事務局長)がベトナム・ベンチェ省副知事に母子手帳の作製・使用を示唆したとき、私は、日本の母子手帳を訳して渡したものとばかり思っていたのですが、そうではありませんでした。その副知事は、日本の母子手帳の考え方(①妊娠・出産・子どもの健康の記録が一冊にまとめられていること、②保護者が手元に保管できる形態であること)は学んだけれど、自分たちの国の事情に合ったものを自分たちでつくる、と言ったそうです。他にアフガニスタン、パレスチナ、インドネシアなどの例を見ても、母子手帳は、国や地域の生活・風習・文化・環境等に合わせて作製され、使われるべきであることが分かります。

2011年3月11日の東日本大震災及びそれに伴う津波の被害の際、岩手県遠野市には多くの母子が逃れてきました。彼らの母子手帳は津波等で失われていました。遠野市はすぐに母子手帳を再発行しました。また、保護者の了解を得て妊婦検診記録を助産師が記録しました。これは、2009年4月より運用されていた「いーはとーぶ」(岩手県周産期医療情報ネットワークシステム)のお陰でした。このシステムは、岩手県内の医療機関や市町村をインターネットで結び、妊産婦の検診情報や診療情報を共有するものです。

しかし、記録は助産師さんたちがつけたのです。医師ではなく。それも岩手県の中でも遠野市が中心でした。実は、遠野市では「いーはとーぶ」に先立ち2007年12月に「遠野市助産院ねっと・ゆりかご」という、産科・小児科をもつ複数の医療機関と提携した市営の助産院が開設されており、ここで働く助産師の皆さんが記録を再記入していったのです。

遠野市は人口約3万人の都市ですが、助産院創設5年前には、同市から産科のある医療施設が消えてしまいました。遠野市の妊婦は、他市に行って生まねばならないのか。そんな困難を乗り越えるため創設されたのが、遠野市は「身の丈に合わせた」と表現していますが、この助産院です。遠野市の広報によれば、ここでは、妊婦主治医の指示による妊婦検診を始めきめ細かな健康相談や指導などのサポートがなされ、市民協働の子育て支援や保育支援と相俟って妊婦が安心してお産に集中できる環境をつくりあげています。

結局、最も大事なことは、「妊婦が安心してお産に集中できること」、そして産後の「子育てが安心してできること」を如何に官民の公が支援することができるかでしょう。久留米の事情に合ったそのような仕組みをつくっていきましょう。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事

  1. 「低体重で生れた赤ちゃんとお母さん」

  2. 「小学2年生がなりたい偉人たち」(私の好きな子どもたちのいる風景)

  3. 母子手帳(5)

  4. 母子手帳(2)

  5. 母子手帳(3)

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。










公式Facebook

最近の記事

  1. 地に足についてますか? ハピママ2018年10月より
  2. たかが癖、されど癖 ハピママ2018年9月掲載
  3. 美味しい季節ですが…2018年8月ハピママより
  4. ADHD児童の行動や学習を変化させる脳機能を高める新しいアプローチ-8月号
  5. 歯医者ってどんなところ?ハピママ2018年7月掲載
PAGE TOP